隣の芝は どうしていつも 青いのか

誰かにとっての「隣の芝」になれるまで、言葉を考え、言葉に悩む。

041 平成最後の日から1年

気付くともう2020/5/1が終わっていた。

 

 

1年前、2019/4/30は、平成最後の日。

 

平成最後の日は、何をしていたかちゃんと覚えられるように、

ちょっとだけ良いお肉を食べに行った。

 

 

お通しの時点で既に美味だったから、割としっかりめに

記憶に残っている。


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その前の昭和は63年と7日続いていたから、

元号が変わるなんていう事態がこんなに早く訪れるなんて、

思ってもいなかった。

 

 

そして1年後。

こんなに窮屈な生活を、これだけの長期間、

強いられることになるなんてのも、想像出来ない。

 

 

いろんな本に書いてあるけど、人生、思いもよらないことが

本当にたくさん起きるものだ。

 

 

本来なら、明日はサカナクションのライブに行き、

5/4~5は新潟でチャラン・ポ・ランタン

Maison book girlのライブを楽しんでいるはずだった。

 

 

幸いにも、自分の周りには新型コロナウイルス

罹った人はまだいないのだが、いつ何時罹るか分からない。

 

 

何より、休みの日はほとんどライブ漬けの日々だった自分にとって、

「生きている実感」を持たせてくれていたのは、

紛れもなくライブであり、ライブハウスだったなあと、

改めて思うここ数ヶ月。

 

 

早いとこ終息させないと、

ライブハウス界隈はその灯が消えかけてきているし、

フェスだって、きっと開催出来ないはずだ。

 

 

特効薬が出来てない現状は、感染者を減らすしかないみたいだし、

ここはじっと耐えて、早く終わらせなきゃいけない。

 

 

 

 

2020/5/1、令和になって丸一年と1日が過ぎた。

 

 

良いお肉に助けを借りずとも、令和2回目の5/1は 自分の人生に

深く記憶されることになる日だと思う。

 

 

 

今日もご愛読、感謝します。

written by kobakkuma.
Tw:@kobakkuma

040 『芸人交換日記』で泣いた話

何がきっかけだっただろうか。

 

タワレコの履歴を遡ると、去年の11月と出ている。

 

理由はもはや忘れてしまっているけれど、僕は去年の11月、作・演出:鈴木おさむの『芸人交換日記』を買っていた。

 

それから転居を伴う異動があったりしてバタバタしてしまったせいで見ることが出来ないまま、今日に至ってしまった。


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2011年の舞台だ、2020年の今になって見ている人もそういないはず。本も出ているし、映画化もされている。こないだLDHの人が朗読の舞台もやっていたっけ。

 

もうネタバレNG云々を気にする必要も無いだろう。

 

 

あらすじとしては、ある1組の鳴かず飛ばず漫才コンビが1つの賞レースに懸け、その後解散し、別々の人生を歩んでいく、その間に繰り広げられる葛藤が「交換日記」を通じて展開していくというもの。

 

僕はもちろん芸人では無いし、芸人を目指したことも無いけれど、きっとこういうやり取りがどこかでは行われているのだろう。違和感は全く無かった。

 

 

2時間20分に及ぶ舞台だったわけだが、僕はこのうちの半分くらいを泣きながら見ることになった。

 

人間、1時間近く泣き続けると、さすがに目は腫れ、鼻の通りは悪くなる。そして、体温も自然と上がる。もし誰かに見られたら、花粉症をこじらせて新型コロナにでも掛かったかと言われてしまいそうな症状だが、安心して欲しい。健康そのものである。

 

 

では何でそんなに泣いていたのか。

 

答えはシンプルで、僕自身が目を背けてきた言葉たちが台詞としてバシバシ出てきたからだ。

 

 

これは感動の涙なんかじゃない。

甲本が売れていった田中に放つ台詞1つ1つが、鋭くて、痛くて、泣いていたんだ。

 

泣きまくっていたから記憶も曖昧だけど、"夢を諦める才能は持っていたい" というような台詞があった。強烈だ。特に、"夢らしきもの"をずっと持っている人には こうかは ばつぐんだ。

 

 

まだ諦めたと言えるような決別をしたわけじゃないけれど、もう何年も蓋をして、目の前の出来事に自分の時間を売り続けて、青春全部を注ぐようなお話があまりにも眩しくてどんどん直視出来なくなって、たまにその手の話をしたり/されたりするとチクチクするような、そういう感情とも理性とも相容れない、"これ"は何なのだろう。

 

伝説のハガキ職人・ツチヤタカユキさんの言葉を借りるなら「カイブツ」とでも称すべきこの存在は、それでも僕の中にちゃんと巣食っていて、今日『芸人交換日記』を見て、袋叩きにあった。

 

 

このお話に出てくる甲本も田中も、僕と同じ31才だった。30才は、20代の戸締まりをする一年間。それが終わった今、やっぱり忘れ物をしたんじゃないかと、そのドアを開けたくなる。

 

開けていいのか? いや、もう開けてる場合では無いだろう。その狭間に苦しめられるのが31才だと、僕は感じている。

 

けれど、その中で"諦める才能"を行使するだけの覚悟を、僕はまだ持ち合わせていない。

 

僕の中の「カイブツ」とは、引き続き交換日記をして、本音を出し合わないといけないのだろう。

 

僕のことを昔から知る人は、いつまで言ってるの?と思うだろうけど、すみません、そんな簡単なものでも無いんですよね、ということは書き残しておきたい。

 

 

『芸人交換日記』の甲本が、舞台のど真ん中で叫んだように。

 

https://tower.jp/item/2934863/芸人交換日記

 

 

 

 

読んでいただき、ありがとうございました。

written by kobakkuma

TW:@kobakkuma

039-2 「狂気」の先にあるもの~後編~

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11/3に行われた『さよならたりないふたり~みなとみらいであいましょう~』、

前回の記事に引き続いて、観た感想を残していこうと思う。

 

※前回の記事は こちら。 

kobakkuma.hateblo.jp

 

今回は、少しだけネタバレを含むことになりそうなので、TV放送で初めての"興奮"を

味わいたい人は、ご注意くださいませ。

 

 

 

 

 

 

 

それでは、第二部のスタートです。

 

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僕にとって、山ちゃんも、若ちゃんも、どちらも心から憧れる芸人である。

 

山ちゃんの著書、『天才はここにいた』『天才はあきらめた』も読んだし、

若ちゃんの著書も結構読んだ。オールナイトニッポンの番組本も。

publications.asahi.com

www.kadokawa.co.jp

www.kadokawa.co.jp

 

books.bunshun.jp

 

どちらも、心から憧れているのは間違いないのだが、それでも、どちらかと言うと、

若林正恭という人間により強く憧れている自分がいる。

 

自分でも何故かは分からないが、若ちゃんの文章では涙がよく出るのだ。

 

 

なので、この公演の感想も、気付くと若ちゃんを主体にしたものになっていた。

 

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TV番組『たりないふたり』の仕組みを知ってる人はお馴染みではあるが、

彼らは番組のTwitterアカウントを共有して、お互いにつぶやきを投げ合うのが

恒例だった。

 

この時点でもう、記事のタイトルにも挙げた「狂気」はスタートしていたのだ。

 

 

全くの情報解禁前にも関わらず、『たりないふたり』のアカウントを使って、

「11/3に、横浜で、何かある」ことを発信する若ちゃん。

 

 さらには、山ちゃん嫁へのいじり、グッズの情報漏洩、果てには伝説の枕詞、

「明日以降に情報解禁なのですが」Creepy Nuts書き下ろしの新曲までもが

オープンになっていく。

 

慌てる山ちゃん、企画の安島さん、構成のサトミツ氏、そして他たくさんの大人たち。

 

 

時間がある人は、是非このアカウントの9/20から11/3までの「文責・若林」に注目して

眺めてみて欲しい。およそ大番組のMCを務めている大人の行動とは思えない。

twitter.com

 

当日、舞台にはホワイトボードと会議室にあるような長机が用意されていて、

以前と同様、漫才の設定や流れの打合せ部分からお客さんに見せつつ、

本番の漫才を考えていく…のかに見えた。

 

 

 

そこで「狂気の男・若林正恭」が取った行動は衝撃的なものだった。

 

打合せ、漫才の設定に関して、9か月ぶりに再会した山ちゃんと一切話すことなく、

そのまま1時間超えのアドリブ漫才に入ったのだ。

(厳密には、フリートークと漫才と漫才コントの中間くらい?)

 

 

山里亮太ほどの能力者ならイケると踏んでいた、あるいは、山里亮太ほどの能力者を

舞台上でガタガタ震わせてやろうと思ったに違いない。

 

この進行に、間違いなく観客全員が度肝を抜かれたはずだ。

 

 


1時間以上ぶっ続けで行った漫才が終わり、2人で反省会をするパートになると、

おもむろに、、

 

「あ、あれ言いたかったんだよ、山ちゃんが結婚会見で最後に言ってた、

 『ご指導ご鞭撻のほど…』  あれさ、ちょっとやっていい?」

 

 

完全に「狂気の"ゾーン"」に入っている若林は、あろうことかもう1本、しかもこれも

1時間級のアドリブ漫才を始めたのだ。

 

 

ただ、この2本目の漫才パートで起きた事件が、二部構成の感想を抱かせるほどの熱量を

僕に与えることとなった。

 

 

1本目の漫才から、若ちゃんがSMの女王様&山ちゃんがM男に扮して漫才コントをする

件(くだり)があり、2本目でもその設定が継続される場面があったのだが、

 

 

女王様のトーンが少し変わるやいなや、

「今のあなたは勝ち組ですか? それとも負け組ですか?」と、

強烈な二元論のムチを放ったのだ。

 

 

M男は、少したじろぎながらも、自身のラジオ「不毛な議論」で結婚報告をした回の

ラスト5分のようなトーンで語り始めた。(めっちゃ感動的でした

 

 

先述の著書『天才はあきらめた』では、

「劣等感は最高のガソリン」「嫌いな奴を燃料にして、脳内で圧倒的な勝利を掴め!」と

"下から関節を極める"ような立ち振る舞いを明らかにしていた。

 

しかし、あの大女優と結婚することによって、いよいよ、富・名声・力・・

漫画ワンピースで言う "この世の全て" を手に入れ、「隠れとんねるず」になっているのが、

今のM男の社会的ステータスである。 

 

 

今まで自分が装備してきた、妬み嫉みその類いの武器で戦ったところで、

(嫁が蒼井優なのに)っていう枕詞が付いた瞬間、明らかにそれまでの形勢とは異なる、

上からのマウンティングと思われかねない。

 

しかも、大番組のMCを任され、後輩も増え、周りの対応はどんどん"ライオンMC"を

扱うような対応になっていて、きっとド直球には言われないレベルになってたんだと思う。

 

 

 

別にこれは彼らだけの話では無いと、僕は思っている。

 

僕の場合、自分の状況を誰かに言い当てられたときや、自分が思いそうなことを先に

誰かにアドバイスされたりすると、どうしようもなく涙が出そうになる。

その「誰か」は、決まって、自分がとても信頼をおける存在だ。

 

 

 

それまで2時間近く、筋書きの無いストーリーに巻き込まれ、「狂気」でギラギラした

若ちゃんと何とか対峙することで、この舞台を守ってきた山ちゃん。

 

かなり疲弊していた中で、不意打ちのような本質を突く問いかけ。

 

 

そんな状況下でも、逃げずに、リアルトーンで自身の "呪縛" を解き放ち、

次のステージに踏み出したこと、また新しい武器を探して戦い続けていこうと決意した

この瞬間こそ、何よりもこの公演のクライマックスだった。

 

 

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同時に、僕はこの「劇薬・若林正恭を、どこかで見たことがあるなと思った。

 

 


そうだ、相方・春日のフライデー事件のときのラジオだ。

 

あのときも、むちゃくちゃキレているように見せて(実際めっちゃキレたんだろうけど)、

春日のことを週刊誌やワイドショーで変に弄ばれないように、93番(春日の嫁のこと)を

電話で登場させ、他でもない春日本人に謝罪させていた。

 

もはやあれはドキュメンタリーだったとさえ思う。

 

 

この時の放送は、本当に若ちゃんはとち狂っていた。

というか、この回よりもっと前から、ラジオでは「狂気」を放っていたのだけど。

 

 

 

若ちゃんの「狂気」は計算しているのか、はたまた感覚で転がっているだけなのかは

誰にも分からないが、 この「狂気」によって救われた人を、僕は少なくとも2人知っている。

 

 

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打合せゼロ、完全即興だからこそ可能な脱線と、それによって辿り着いた奇跡的な瞬間。

 

若ちゃんの「狂気」は、カタルシスとも言える感覚をもたらしていた。

彼の著書を読んで涙を流していたのは、こういう要素も影響していたのかもしれない。

 

 

"たりない"という言葉が、こんなに前向きなものだったなんて思わなかった。

趣味の悪い先入観は、全く要らない。

 

そのことを、かつての "たりないふたり" から、力づくで教えてもらった気がした。

 

 

次の "たりない" ステージが2人には待っているはずだし、そこからどんな景色が見えるのか、

ノーガードで撃ち合う2人をまた見られますように。

 

 

さよなら?いや、こんにちは。

 

拝啓、新しい "たりないふたり" 様 へ。

 

 

毎度お読み頂き、ありがとうございます。

written by kobakkuma.

こばっくま (@kobakkuma) | Twitter