029 zeroとともに
『博士の愛した数式』という本がある。
小川洋子さんの著書で、映画化もされているし、知っている人も多いと思う。
その一節に、「ゼロの素晴らしさ」を博士が語るシーンがある。
「0を発見した人間は、偉大だと思わないかね (中略) 無を数字で表現したんだ。非存在を存在させた。(中略)矛盾のなさが強調され、秩序は強固になる。」
これを読んだとき、もし仮に何もかも失ってゼロになっても、
存在して良いって認められたような気がした。
この本の中でも、個人的に印象的な部分。
■『zero』からの決意
昨日、Aimerの初となる武道館公演を、ライブビューイングで見てきた。
タイトルは"blanc et noir"、フランス語で白と黒。
Aimerのファンクラブの名前にもなっているし、今年リリースされた
2枚のベストアルバムも、『blanc』と『noir』。
Aimer自身にとっても、ファンにとっても、思い入れのあるフレーズだと思う。
ライブは『blanc』編『noir』編のように、それぞれのアルバムから
選曲されて進んでいった。
(Aimerのネイルも白と黒になってましたね!)
終盤に入り、このステージに立って、想いを語るAimer。
うろ覚えだけど、こんなようなことを話してたと思う。
「初の武道館だけど、特別扱いするのではなく、いつも通り
歌を届けようと思って来ました」
「でも、初めての武道館は1回だけ、ここに連れてきてくれた、
みなさんのおかげ」
「声が出なくても、やっぱり歌が好きで、歌う度に好きになって、
これからも歌を届けたい」
特に最後のフレーズは、声帯を傷めているAimerの言葉だからこそ、
その気持ちの強さを感じた。
そんな想いの詰まったMCから歌われたのが、『noir』の最後に
収録されている「zero」という曲。
これからも僕らに声を、音を、詩を、僕らのリアルとして刻んでくれる、
そんな誓いのようなパフォーマンスだったように思う。
「ここからが新しい始まり」と言っていたのも、より引き立てていた気がする。
■Aimerとの出会い
Aimerのメジャーデビューは2011年、忘れもしない、東日本大震災が起きた年。
その年、僕は入社1年目。
会社のボランティアで石巻まで復興支援に行ったことがあった。
仕事を終え、夜行バスで向かいながら、この先どうなってしまうのか、
少しばかり不安を抱きながら、僕はラジオをぼんやり聴いていた。
その時、Date fmから流れてきたのが、Aimerのメジャーデビュー曲
「六等星の夜」だった。
時間に余裕がある方は、6分弱の間、耳を傾けてみてください。
東京とは違う真っ暗な夜を見る僕に、これ以上無く寄り添ってくれた曲。
聴く度にあの日の夜を思い出す。
大げさだけど、僕の人生にとても深く関わっている。
昨日のアンコールのラスト、ピアノだけをバックに、時折涙ぐんだ声で
歌いきった。
LEDで星を模した演出もあって、ライブビューイングではあったけど、
とても綺麗だった。
それはもう鳥肌もので、この曲を聴いてる間、感動しか無かった。
(スマホライト振り出した人も居て、それはそれで綺麗だったんだけど、
現場ではどうやら光りもの禁止だった様子…これはまた別のお話ですかね)
初の武道館、13,000人。+LVの観客。
11年のメジャーデビューから7年目、一つAimerにとってのマイルストーンに
なった夜だったと思う。
個人的には、昨日のような演出、聴かせ方であれば、
いつか見てみたいな。
・・・・・
ライブが終わって、思うことがどばーーっと溢れてきて、勢いで書いてきた。
この勢いも含めて残したかったから、まぁ良しとしようか。
今日はそんな、Aimer(エメ)というアーティストのお話でした。
長文駄文にお付き合い頂き、ありがとうございます。
今日もご愛読、感謝。
written by kobakkuma.
TW:@kobakkuma