030 打ち上げ花火、上から見るのはaikoだけ
女性客「感動しました!」
— zbpt (@zbpt) 2017年8月15日
女性客「私は下派で…」
男性客「僕は横派!」
ナレーション「この夏、色んな角度で見てみませんか…?」
主演男優「打ち上げ花火~」
主演女優「下から見るか~」
客席「横から見るか~」
紙吹雪バーン!!!
カップル「打ち花最高~」
aiko「ウチは上から!」
ということで、映画『打ち上げ花火、下から見るか?横から見るか?』観てきた。
(※以下、『打ち上げ花火~』とします。)
(※また、原作を"実写版"、これを"劇場版アニメ"と呼ぶことにします。)
■見終えてすぐの感想
(良い映画ではあったけど、想像を超えるような感じは無かったような…)
これが観終えてすぐの感想。
まぁ僕自身の想像がどのレベルを想像していたのかという議論もあるんだけど、
それは一旦置いといたとして。
じゃあなんでそう思ったのか、という疑問が湧いてきた。
原作:岩井俊二、脚本:大根仁、総監督:新房昭之、アニメーション:シャフト、
プロデューサー:川村元気、声優は広瀬すずに菅田将暉、宮野真守。
もう、一流どころか、超一流のヒットメーカー・エンターテイナー達が
名を連ねている。
そもそも、93年にTVで放送、95年に映画公開された実写版は、今もなお、
大きな影響を与えている。
なのに、劇場版アニメでは、気持ち的にグッと来るものが多くは無かった。
これはまずい。まずいぞ。
自分の中の感受性が錆び付いてるんじゃないか?そんな疑いがあったので、
もう少し、この作品を追いかけることにしてみた。
■実写版の感想
(以下、若干のネタバレ含むかも…ご注意を!!)
ということで、実写版のDVDを買ってきた。
幸いタワレコポイントがたんまりあったので、実質4円というね。w
・・・これはすごい!
小学生同士という設定だからこそのぶっきらぼうな発言、
あからさまに焦っている表情、
良く分からないけど自分で確かめないと気が済まない衝動、
目線が小6男子ということもあり、男なら一度は思い出すような感覚が
数多く詰まっていた。少なくとも、僕の場合はそうだった。
少し好きだった(かもしれない)女の子にブスって言ったりとかね。w
実写版についても思うことはいっぱいあるんだけど、ひとまず見終わった後、
唸ったよね。語り切らない良さがここにある、これが”マスターピース”かと。
エンドロール見てさらに驚いたのは、助監督に行定勲さんがいること。
どこまでもレジェンド的な作品だと思う。
ただ、実写版は約1時間の中で完結される話だったし、何かまだ見落としが
あるんじゃないかと思って、今年岩井俊二さんが自ら書き下ろした原作も、
買って読んでみた。
正直、実写版を見てから文庫版を読んだのは失敗だったと思う。
書いてあることが、実写版の通りにイメージ出来てしまったから。
もし逆の順序で辿っていたら、もっと実写版の凄さに感動しているはず。
それくらい、 実写版キャストの演技が自然、かつ印象的だったということを
文庫版の文字情報が教えてくれた。(14才の奥菜恵すごいね。w)
この文庫版は劇場版アニメとは違って、 実写版のストーリーを描いてたんだけど、
やっぱり、この「思春期の入り口」感が見事に込められている。
このストーリーの根本はここなんじゃないかということで、
僕は1つの着地点を得た。
■あの感想の出どころ
さて、翻って劇場版アニメの方である。
観終わった直後のあの感想は、何だったのだろう。
実写版や文庫版を一切知らなかったくせに抱いた、”想像を超えてこない”という
感想は、どこから来たのだろう。
そこで引き合いに出したいアニメ作品が2つある。
1つは、『あの花』である。
文庫版のあとがきには、岩井俊二さん自らが、この作品の始まりから語っている
「短い小説のための長いあとがき」がある。
その一節に、依頼されたドラマのテーマ「if もしも」に沿わせるため、
「群像劇にする」というアイデアが登場する。
これを読んだ瞬間、僕の頭には『あの花』がよぎった。
超平和バスターズが小学生であったこと、仁太は、本当はそんなこと思ってない、
むしろ逆の気持ちなのに、めんまのことを「ブス」と言ってしまったこと。
当然、時系列的には『打ち上げ花火~』が先なので、もしかしたら『あの花』は
この作品のオマージュなんじゃないかなーと想像した。
この想像が当たっているか外れているかは大したことでは無いんだけど、
『あの花』の音楽を担当していたのが、REMEDIOSというアーティストだったのには
驚いた。やっぱり、何かしら繋がっていると思いたくなる。
実写版の『打ち上げ花火~』においては、"もうこれ以上無い!"っていうくらい
絶妙なタイミングで入るBGMがあって。
それが、REMEDIOSの「Forever Friends」だった。
Hold me like a friend/Kiss me like a friend/Say we'll never end
歌い出しはこんな感じ。
結局、あの子の本当の気持ちなんて分からない。あいつの意図も分からない。
10代も後半に入れば分かるかもしれない、そんな気持ちさえ、
「思春期の入り口」にいる自分にはくすぐったくて良く分からない。
だからこそ、お互いに今のままがずっと続いて欲しいと願う。
そんな気持ちが音楽になったような気がして、心を持ってかれた。
どことなく、『あの花』にも通じるものがあるような気がするんだよなー。笑
●『君の名は。』
去年、ちょうど同じくらいの時期に公開されてたよね。
超ド級のヒットになったこの作品、もちろん新海監督はすごいわけで、
そして主題歌含めて音楽を担当したRADWIMPSの野田洋次郎もすごいんだけど、
新海監督にRADWIMPSを引き合わせた、川村元気プロデューサーもまた、
すごいわけです。
劇場版アニメ『打ち上げ花火~』も川村P。
映画において、プロデューサーがどこまでストーリーや演出に関わっていくのかは
知らないけど、『君の名は。』の手法とこの作品、「最後まで見せ切る」という点で
結構似てるんじゃないかなーと思った。
過去の新海作品をそれなりに見てきている僕としては、『君の名は。』を観たとき、
エンディングで(あっ、出会えちゃうんだ・・)と思った記憶がある。
それまでの新海作品であれば、たぶん、”出会えずじまい”になるはず。
仮に出会えたとしても、物理的/心理的に距離があったりするものになるはず。
見えない会えないからこそ、想いを抱き続けて生きていく。
そこを、『君の名は。』は、ばっちり運命的に出会わせて、ハッピーエンドに
終わらせることで、最後まで答えを見せ切るようにアプローチしてきた。
僕個人としては、この「最後まで見せ切る」手法が、現代の若い世代に対する
アプローチの1つとして成功したんじゃないかと思っていて。
(こんなことを言うと、もうおじさんですね…とほほ。)
それを考えると、今回の『打ち上げ花火~』は、その流れが続いていると思う。
タイムリープというか、時間を繰り返す系の作品、僕は好きな部類で。
たしか一番最初にこういう作品に出会ったのは、日テレで放送されてたドラマ
『君といた未来のために~I'll be back~』だった。
どこが好きなのかは至って単純で、”あんなことをしなければ”、
”ああしておけば”という、現実世界には絶対にはあり得ないやり直しが出来て、
まさにフィクションっていう感じがするから。
もちろん、たくさん生まれる「もし・・」の先は分からない。
分からないからこそ、想像の余地・遊びが残っている。
ただ、この劇場版アニメでは、最後の花火が打ち上がったとき、ばらばらに砕けた
欠片に、それぞれの登場人物が描く「もし・・」の先が描かれていた。
「もし・・」の先をダイレクトに見せる=最後まで見せ切ることになるわけで、
その点において、『君の名は。』に通ずるエンディングだなーと思ったわけです。
・・・・・・・・・
当初の自分への疑問に対しては、きっとこの2つのアニメ作品を
既に経験してしまっていたから思ったのかなと、いろいろ追いかけてみたことで
一旦は、答えにたどり着けたような気がする。
■追ってみて分かったこと
いろいろと関連してそうな作品を追ってみて分かったことがあって。
それは、「良いところに気付けるか、面白いと思えるかどうかは、
自分の目線次第」ということ。
そもそもこういう部類のストーリーは、視聴者それぞれの想像や憶測という
補完をみんなが勝手にすることで、作品がより魅力的になるものだと、
僕は信じていた。それは今でも変わらない。
一方で、この劇場版アニメでは、それぞれの登場人物が「もしも」の先を
どう想像していたのか、本当はどう思っていたのか分かるのは、
なんとなく答え合わせをしてるようで楽しかったし、
なずなが松田聖子の『瑠璃色の地球』を歌うシーンには、文庫版に書いてた
『銀河鉄道の夜』へのオマージュが表れていた気がするし、
主題歌の「打上花火」も、かなりの名曲だと思った。
(Forever Friendsは、さすがに原曲が良かったかな~ > <;)
たとえいろんなサイトで批判の嵐になっていたとしても、その作品を巡る
コンテクストは至る所に隠れている。
まぁ正直劇場へ足を運ぶべきかどうかと聞かれると難しいけど、クチコミほど
批判されるような作品でも無いと思う。
「良いところに気付けるか、面白いと思えるかどうかは、自分の目線次第」
というわけで、これからもしっかり目線を養っていこうと思いましたとさ。
いや~、長文すみませんでした。
少し熱盛多めになってしまいました。
…失礼いたしました。熱盛と出てしまいました。
「熱量多め」の間違いです。失礼いたしました。
今日もご愛読、感謝です。
written by kobakkuma.
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